最後の試練

学友は、どことも分からない、薄暗くかび臭い部屋にロープで 縛られていた。
森仁は、香港中をくまなく捜して、 澄清を見つけ出すように子分に命じた。
「まぁ、今まで男だと思っていたのが、実は女でした ってのはどうだ?笑えるか?」
学友は、森仁の話も耳に入ってこなかった。
「おいおい、よっぽどショックなのか知らねぇが、あいつは女。 まぁどこをどう手術して、男になったかは知らねぇけどもな」
相変わらず学友は、俯いたまま森仁の話を聞こうとしなかった。
「まぁおめぇさんには、関係の無いことだからいいけどな、 とにかくおとなしくしてろよ。C.Cが見つかったら、お前も 帰してやるからよ」
そう言い残して、森仁も部屋を後にした。
「友友こっちだよこっちぃ!キャッ捕まっちゃった・・」
「お、俺・・・学友の事本当に大好きなんだ。だから学友に は話したくない。きっと嫌われる」
「あたち絶対大きくなったら友友のお嫁ちゃんになるよ」
「俺、庚澄慶ってんだ。そこの康樂街を一本入った海街に 小鳥屋を開くことになったんだ。よかったら来てくれよ」
澄清・・・俺の澄清?だから?澄慶と何の関係が?
「あー頭・・・・割れそう・・・」
考えても考えても 現実逃避をしているかように、判りきっている答えに、納得が 出来ずにいた。
学友はすぐにでも頭を掻き毟りたかった。
きつく縛られたロープによってそれを拒まれたが、 両手をがむしゃらに動かし、頭を掻き毟っているような感覚だけで 今頭の中に浮かぶ澄慶と澄清の接点をもう一度整理しようとした。
あまりに手を激しく動かしたせいで、手首が切れ、その傷口にロープが 食い込んだ。あまりの激しい痛みに学友は我を取り戻した。
「澄慶、澄清?そんなの今はどうでもいいだろっ!学友しっかりしろよ! お前がうじうじ考えてどーすんだよっ!あいつちゃんと逃げ切れたのか? とにかく逃げろ!!逃げ切ってくれよ!!このまま俺と会わずに台湾へ 連れ戻されるなんてごめんだぜ!お前は誰にも渡さないからなぁぁっっ!」
学友は自分の思うことを腹の底から思いっきり叫んだ。
力んだせいで、手首の傷にまたロープが食い込んだが、歯を食いしばり それに耐えた。
「カタンッ」
学友は、自分の叫んだ声で、また奴らが戻ってきたと思い身構えた。
「友友・・・」
声のする方を見ると、逃げているはずの澄慶が薄暗いベランダに立っていた。
「ば、ばかっ!何やってんだよっ!!まじで切れるぞ!俺の事はどうでもいいから 、早く逃げろっ!俺を助けたらお前を殴るぞ!!早く逃げろっっ!!」
澄慶は、側に落ちていた鉄片を振り下ろしガラスを割った。古いガラスだったが 厚みがあり、中々割れなかった。何度も何度も振り下ろし、少しずつヒビが 大きくなってきた。振り下ろすたびに高音だが鈍い音がビル街に共鳴した。 追っ手が戻ってくるかも知れないと言うことも忘れて無我夢中でガラスをたたいた。 鍵まで手が届くくらいの穴がようやく開いた。割れたガラスの中に手を突っ込んで 、澄慶は鍵を開けた。手を穴から抜くとき、鋭いガラスの淵で何箇所も切った。
ガラス戸を開けると学友の側まで走りより きつく縛られたロープを割れたガラスの破片を使って切ろうとした。
「澄慶!いいから・・もういいから・・早く逃げるんだ・・!」
何とかロープが切れ、学友の体が自由になった。
「お前っ!!」
学友は切れて血で染まった拳を振り上げ、澄慶を殴ろうとした。しだいに力が抜け 振りかざした手を下ろした。
「ありがとう」
学友はそう言って澄慶を抱き寄せた。
「さっきの学友の声聞こえたんだ。誰にも渡さないって。僕もおんなじ。学友を誰にも渡さない。 だから戻ってきたんだ。一人で逃げられないよ。学友を置いてなんか・・・ こんなに傷だらけになって・・・ごめん本当にごめんよ学友・・・痛かったろ・・ごめんよ」
そう言って澄慶は泣きじゃくりながら、ロープが食い込んでいた学友の傷口を優しく舐めた。
「お前も、いっぱい怪我しているじゃないか。女の子なのに・・・お前・・・澄 清・・・澄清・・・」 学友は、逃げなくてはいけない事も忘れそうになるくらい、澄慶が愛しく感じた。


−続く−

−JOAこめんと−
ほんますんまそん(T_T)な、何と言えばよいのやら・・・うぉっ!大して長くない 話なのに、何年かかってるんだ・・・筆不精というかキーボード不精っつーか。 とにかくすみません。お待たせしすぎまして・・お許しください。さて、いよいよ 最終回です。やっぱラストは白蓮におまかせします。わしには絶対無理・・・。 わしに回したら、あと3年かかるかも・・・うおぉぉぉぉっ!!とにかくJOA編は ここまでです。長らくの間お待たせ+お世話になりました。お付き合いいただきました 皆様、本当に感謝いたします。ありがとうございました。また(あ、あるのか?) 機会がありましたらお会いいたしましょう!! JOA上−2003/Sep/20


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